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『ザ・ロイヤルファミリー』― 受け継がれていくもの、変わっていくもの

早見和真さんの小説『ザ・ロイヤルファミリー』(新潮社)は、競馬の世界を舞台に、家族の絆と継承を描いた長編です。


第33回山本周五郎賞を受賞し、2025年10月からはTBS日曜劇場でドラマ化も始まりました。

タイトルにある“ロイヤル”は、物語の中で馬の冠名として使われる言葉であり、同時に「血統」や「誇り」といった人間の根底に流れるテーマを象徴しているようです。



競馬という舞台の、その奥にあるもの



主人公は、税理士の栗須栄治。

ひょんなことから人材派遣会社「ロイヤルヒューマン」の社長に仕えることになり、競馬と馬主の世界へと足を踏み入れていきます。


馬を育て、走らせ、勝ち負けを繰り返す――その舞台の裏には、人の夢や欲、そして「受け継ぐ」という想いが複雑に交錯しています。



競馬というと華やかな印象を持ちがちですが、この物語ではむしろ、そこに生きる人々の孤独や葛藤、信念が丁寧に描かれています。

血統という言葉の重みが、人間関係や家族の在り方にまで響いてくるのです。



ドラマ版が描く“現代のロイヤルファミリー”



2025年秋のTBS日曜劇場では、妻夫木聡さんを主演に、佐藤浩市さん、目黒蓮さん、黒木瞳さんらが共演。

塚原あゆ子さんによる演出で、原作の20年に及ぶ物語を重厚に映像化しています。



馬と人との関係を通して描かれるのは、「何を信じて走るのか」という問い。

華やかなレースの裏にある静かな闘いを、俳優陣の表情がどう伝えていくのかも楽しみです。


JRAの協力により、本物の競馬場での撮影も行われるそうで、スケールのある映像美にも期待が高まります。



家族という名の“チーム”



この作品に流れているのは、血縁だけではない“つながり”の物語です。


親から子へ、上司から部下へ、あるいは師から弟子へ――誰かの想いを受け取り、また次へと手渡していく。

その繰り返しの中に、人生の確かな温度があるのだと感じます。



競馬の血統と、人の生き方が重なり合うとき、そこには悲しみも喜びも含めた“生きること”そのものが浮かび上がります。

ページを開くたびに、そしてドラマの画面を通しても、私たちはその静かな力に心を揺さぶられるのかもしれません。



受け継ぐということ



『ザ・ロイヤルファミリー』は、単なる競馬小説ではなく、時代を越えて続いていく人間の物語です。


夢を追うことの尊さと、それを支える人たちの静かな情熱。


そのすべてを包み込むように、“家族”という言葉が静かに響いています。



走り続ける馬のように、私たちもまた、誰かから何かを受け継ぎながら生きていく。


そのことに気づかせてくれる物語です。


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